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吸魂鬼は地上を歩く生物の中でももっとも忌まわしい生き物の一つだ。もっとも暗く、もっとも穢れた場所にはびこり、凋落と絶望の中に栄え、平和や希望、幸福を周りの空気から吸い取ってしまう。マグルでさえ、吸魂鬼の姿をみることはできなくても、その存在は感じ取る。吸魂鬼に近づき過ぎると、楽しい気分も幸福な思い出も、一かけらも残さず吸い取られてしまう。やろうと思えば、吸魂鬼は相手を貪り続け、しまいには吸魂鬼自身と同じ状態にしてしまうことができる――邪悪な魂の抜け殻にね。心に最悪の経験だけしか残らない状態だ。 リーマス・ルーピン

吸魂鬼あるいはディメンターとは、地上を滑るように移動する非存在[1] に分類されるの生物であり、世界で最もおぞましい生き物とされている。吸魂鬼は文字通り人間の幸福を餌にしており、近くにいる人に絶望と憂鬱をもたらす。彼らはまた、人間の魂を吸い取ることができ、吸い取られた人間は永遠の昏睡状態に陥る。吸鬼(soul-sucking fiends)と呼ばれるのもそのためである。彼らは人を「抜け殻」にすると言われている。

1996年半ばごろまで、魔法省は吸魂鬼を牢獄アズカバンの看守として使っていた。ヴォルデモート卿が魔法省の実権を握ると、吸魂鬼たちは彼の側についた。1998年第二次魔法戦争が終結すると魔法省は刷新され、キングズリー・シャックルボルト魔法大臣は政府が2度と吸魂鬼を使うことはないと約束した[2]

吸魂鬼に対する防衛手段として守護霊の呪文が使われる。吸魂鬼は吸収する人間を提供しない限り誰にも忠実ではない。彼らを破壊することは不可能であるが、繁殖が減れば、つまり絶望と腐敗がかたちづくられることを防げば、個体数を制限することができる[2]

歴史[]

前史[]

調査のためにアズカバンに入ったものたちは、見たことを問われても黙して語らなかった。しかし塀の中を吸魂鬼が跋扈していたことは真の恐怖への序章に過ぎなかった アズカバン前史についてJ・K・ローリング

イギリスの魔法社会における吸魂鬼の歴史はある場所と分かちがたく結びついている。アズカバンだ。北海に位置し内部に魔法使い用の牢獄を擁するこの島は、魔法使いの地図にもマグルの地図にも記されたことはない。最悪の闇の魔術を研究した”エクリジス”が要塞を築いた最初の居住者だと言われている。エクリジスはマグルの船乗りをアズカバンに誘い込んでは拷問し、殺害していた。彼の死後、かけられていた様々な隠蔽の呪文が解け、魔法省は謎の要塞の存在に気づく。

Azkaban

近年のアズカバン

廃墟となった要塞を訪れた調査隊は吸魂鬼のコロニーを発見した。報復を恐れた魔法省はこの闇の魔物たちをアズカバンから追い払うことができず、この巨大なコロニーをそのまま残すことに決めた。

1718年に魔法省大臣に選出されたダモクレス・ロウルは、吸魂鬼を看守にしてアズカバンを牢獄にすれば費用、時間、脱獄を減らせると主張した。この計画は最終的に実行に移され、各方面からの反対にもかかわらずアズカバンは脱獄がほぼ不可能であるという理由から第二次魔法戦争まで牢獄として使用された。以来、吸魂鬼たちはアズカバンの看守として魔法省に仕え、塀の中で囚人の生気を貪ってきた。1733年 から1747年 まで魔法省大臣を務めたエルドリッチ・ディゴリーはアズカバンを訪れ、吸魂鬼が囚人に与える絶望と狂気に恐怖した。ディゴリーはアズカバンの代替を見つけるべく委員会を立ち上げ、吸魂鬼を排除しようとしたが、人々は餌を奪われた闇の魔物たちが本島を襲うのではないかと恐れ反対した。そうこうするうちにディゴリーはドラゴン・ポックス(竜痘)にかかり、執務室で死亡。魔法使い用の牢獄を改革しようという彼の運動は頓挫した。

魔法界では、吸魂鬼がアズカバンの看守をしている限り枕を高くして眠れるという意見が多数派だった。どんなに危険な囚人も脱獄は事実上不可能だからである。しかし中には吸魂鬼は信用ならないと考えるものもいた。闇の魔法使いが現れ、魔法省より多くのものを吸魂鬼に約束すれば、奴らの忠誠心などどう転ぶかわからないというわけだ。とりわけアルバス・ダンブルドアは、そもそもそのような化け物と盟約を結んだこと自体、魔法省の失態であると考えていた。一方アラスター・ムーディは、死喰い人のような凶暴な連中はアズカバン送りがふさわしいという考えを持っていた。

1993年~1994年[]

あいつらがそばにくるとヴォルデモートが僕の母さんを殺したときの声が聞こえるんです 吸魂鬼についてハリー・ポッター

Dementor on the train

シリウス・ブラックを探してホグワーツ特急に乗り込む吸魂鬼

1993年にアズカバンから脱獄した「殺人鬼」シリウス・ブラックから生徒を守るため、吸魂鬼たちは1993~1994学年度の間、ホグワーツ魔法魔術学校に派遣される。ホグワーツ特急においてハリー・ポッターは初めて吸魂鬼を見る。ハリーは、吸魂鬼がそばに来るとヴォルデモート卿が両親を殺した時の声という、最悪の記憶が蘇る。彼は危険な状態だったが同乗していた新しい闇の魔術に対する防衛術教授リーマス・ルーピンの助けで事なきを得た。吸魂鬼がホグワーツに配属されると、アルバス・ダンブルドア校長は生徒たちに、吸魂鬼に攻撃させる口実を作るなと警告した。ダンブルドアは吸魂鬼を学校の敷地内に入れることを拒んでいた。シリウス・ブラックが校内に侵入したと判明すると吸魂鬼たちは中に入って捜索したがったが、ダンブルドアは頑なに拒否した。

Anti-Dementor lessons

吸魂鬼に化けたまね妖怪に対し無形の守護霊を放つハリー・ポッター

ハリーはクィディッチの試合中、吸魂鬼の集団と2度目の遭遇を果たし、気を失ってから落ちた。このときはダンブルドアが魔法でハリーの落下を抑え、守護霊で吸魂鬼を追い払ってから担架を出した。吸魂鬼たちはハリーの暗い過去の記憶に吸い寄せられ、そのためにハリーも彼らの攻撃に脆弱であった。ルーピンは後に、試合の空気と興奮が吸魂鬼たちを魅了して呼び寄せたのではないかと語っている。

吸魂鬼を倒すため、ハリーはルーピンに教えを乞う。ルーピンはハリーに守護霊の呪文を授け、ハリーを見ると吸魂鬼に変身するまね妖怪を使って練習した。ハリーの守護霊は牡鹿で、それは彼の父ジェームズの守護霊と同じであり動物もどきの姿でもあった。次のクィディッチの試合においてスリザリンドラコ・マルフォイビンセント・クラッブグレゴリー・ゴイルマーカス・フリントらがローブを着て吸魂鬼のふりをすると、本物と勘違いしたハリーは守護霊を出して撃退、試合に勝った。ミネルバ・マクゴナガルが4人に処罰を言い渡し、スリザリンから50点減点した。

Black Lake PM

黒い湖のほとりで吸魂鬼たちに襲われるハリー、ハーマイオニー、シリウス

ハリーは最初、完全な守護霊を創ることができなかった。ハリー、ハーマイオニー・グレンジャー、シリウス・ブラックが禁じられた森襲われが奪われかけたとき、3人は強力で完全な守護霊に救われる。その守護霊は逆転時計を使ってハーマイオニー・グレンジャーと時間をさかのぼったハリー自身が生み出したものだった(これでハリーは3度目と4度目の遭遇を同時に体験したことになる。彼はタイムトラベルしたことによって同じ体験を違う視点で2度している)。森で吸魂鬼がハリーにキスを試みたことで、学年度の終わりにコーネリウス・ファッジ魔法大臣は吸魂鬼をホグワーツから退去させることを決めた。ダンブルドアはその決断に喜んだ。

1995年~1996年[]

吸魂鬼も我々に味方するであろう・・・・・・あの者たちは、生来我らが仲間なのだ・・・・・・ 死喰い人たちに対しヴォルデモート卿

三大魔法学校対抗試合において、ハリーは偽の吸魂鬼と戦う。ハリーは守護霊の呪文を使うが、吸魂鬼がつまずいたのを見て、正体はまね妖怪だと見破る。彼は「リディクラス」を唱えてまね妖怪を撃退した。

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ハリー・ポッターとダドリー・ダーズリーを襲撃する吸魂鬼

ハリーの5度目の対決はプリベット通り付近の路地で起こった。ハリーと従兄のダドリー・ダーズリードローレス・アンブリッジにより秘密かつ違法に送られた2体の吸魂鬼に待ち伏せされる。彼はうまく守護霊の呪文を出して2体とも撃退すると、スクイブアラベラ・フィッグに保護される。ハリーは未成年で魔法を使ったため裁判にかけられるが正当防衛が認められ放免となった。およそ1年後、アンブリッジは自分の差し金だったとハリーに白状する。

1996年7月までに、アズカバンにいたすべての吸魂鬼は雇い主に反乱を起こしてより多くの「餌」を約束したヴォルデモート卿の味方に付いた。これは1996年と1997年死喰い人たちのアズカバン脱獄を助けた。1996年中ごろまでに、ヴォルデモート卿のもとにいた吸魂鬼たちは増殖して7月に「季節外れの」霧を起こした。コーネリウス・ファッジイギリス首相に対し、吸魂鬼が彼の国民から幸せを吸い取っていることを認めた。

1997年~1998年[]

周りの空気が凍った。ハリーの息は詰まり、胸の中で固まった。暗闇から現れた姿は、闇よりもいっそう黒く渦巻き、城に向かって大きな波のようにうごめいて移動していた。顔はフードで覆われ、ガラガラと断末魔の息を響かせ・・・・ ホグワーツの戦いへの吸魂鬼の参戦

1997年、吸魂鬼たちは自由にマグルの村を動き回るようになり、姿は見えないが存在を感じられるマグルたちに絶望感を与えた。

DH1 Dementors over the Muggle-Borns Trial Court

マグル生まれ登録委員会の法廷を警護する吸魂鬼たち

1997年、アルバート・ランコーンに変身して魔法省に侵入したハリーは、マグル生まれ登録委員会の法廷で吸魂鬼たちと遭遇する。吸魂鬼は被告席のマグル生まれ魔女、魔法使い脅し、有罪判決を受けたものを法廷から連れ出していた。ドローレス・アンブリッジはネコの守護霊で自分と委員たちを守っていたが、ハリーが彼女を気絶させると守護霊も消え去った。ハリーとハーマイオニーはメアリー・カターモールから吸魂鬼を追い払うと、彼女を連れてマグル生まれたちを逃がした。

Hogwarts dementor

第二次魔法戦争でホグワーツを根城にする吸魂鬼たち

ハリー、ロン、ハーマイオニーがホグズミードに忍び込むと、夜鳴き呪文が発動し死喰い人たちが集まってくる。3人は透明マントに隠れていて見えなかったため死喰い人たちは吸魂鬼を呼び寄せた。吸魂鬼たちが3人の存在を感じ取って近づいてきたため、ハリーはやむなく守護霊を出す。キスから逃れた3人だったが死喰い人に位置を悟られ危機に陥る。しかし3人は捕まる前にホッグズ・ヘッドアバーフォース・ダンブルドアに助けられる。彼はヤギの守護霊を出して見せ、夜鳴き呪文がなったのはネコを散歩させたからだと死喰い人に説明した。

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第二次魔法戦争最後の戦いに参加する吸魂鬼たち

その後、ホグワーツの戦いでは、吸魂鬼たちはヴォルデモート卿や死喰い人と共に戦った。ハリー、ハーマイオニー、ロンの3人は大量の吸魂鬼に襲われる。3人はフレッド・ウィーズリーの死など、直前に恐ろしいことを体験していたため、吸魂鬼に強く作用され反撃できなかった。ハリーは絶望のあまり吸魂鬼のキスにより与えられる虚無を歓迎すらしようとしていたが、シェーマス・フィネガンルーナ・ラブグッドアーニー・マクミランらの出した守護霊に助けられ、励まされて自らも呪文を唱えて追い払った。しばらく後、ハリーは禁じられた森でさらに多くの吸魂鬼たちに会うが、蘇りの石で現れたジェームズとリリー・ポッター、シリウスとルーピンの存在が守護霊の役割を果たした。

1998年以降[]

第二次魔法戦争終結後、元闇払い不死鳥の騎士団団員であるキングズリー・シャックルボルトが魔法大臣に就任する。戦時中に闇の魔法使いに協力したことから、シャックルボルトは彼らのアズカバン看守の任を解き、闇祓いを新たな看守とした。その後吸魂鬼がどこへ行き何をしたかは明らかにされていない。彼らが去ったあと、文字通り天候は良くなった[2]

名前の由来[]

英語の dementor は邪悪な化物、恐ろしげな化物を指す。この言葉の由来はラテン語の dēmens で、「狂気の」という意味である。

登場作品[]

関連項目[]

脚注[]

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